トッケーの鳴く夜は恐ろしい

今日のストーリー
Gellinger / Pixabay
トッケーの鳴く夜は恐ろしい 小野田優作はバンコクの郊外の一軒家を1年契約で借りることにした。 場所はプラカノンの運河の近くの運河のすぐ近くだった。 優作は物件探しは自分で歩いて探した。 運河の近く、人気のない場所にその一軒家はあった。 ソイの行き止まりで、その先は運河が流れていた。 その家の入り口に英語で”RENT”と看板がぶらさがっていた。 人気のない不気味な家だった。隣にはやはり古い家が建っていた。 優作がしばらくその家を見ていると、隣の家から老婆が姿を表した。 どこにでもいるようなタイのおばあさんだった。 ”家を借りるのかい。やすくしとくよ。” ”でも、大きな家だから僕には無理でしょう。” 優作はたどたどしいタイ語で答えた。 ”日本人だね。前に住んでた人も日本人だった。” ”え、そうなんですか。” ”前と言っても30年も前だがね。” ”30年前ですか。” ”そうだよ、変わった人で、一人ぐらしだった。” ”誰もそれ以来、住んでいないんですか。” ”いや、借りてもすぐにひっこすんじゃ。” ”すぐに引っ越すって・・・。” ”さみしい場所だからじゃないかね。” 確かに、人がやって来るような場所ではなかった。 ”おばあさん、名前はなんていうんですか。” ”トッケーじゃ。” ”あんまりきかない名前ですね” ”トッケーじゃ。トッケーじゃ。ふふふ。” おばあさんは不気味に笑った、 ”それで家賃は月いくらなんですか。” ”いくらだったらいいんじゃね。” ”はあ、5000バーツじゃむりですよね。” ”日本人じゃから5000バーツでいいよ。” ”でも、3ヶ月ぶんはいま払えないので。” ”ええよ、ええよ、5000バーツで。” 優作は結局その家に一人で住むことにした。 不思議なことに、隣の家の大家のおばあさんの姿をそれ以来目に することがなかった。 引っ越して、1週間がたったときのある夜のことだった。 突然、真夜中に、不気味な鳴き声がした。 ”トッケー、トッケー、トッケー、トッケー” 人の声のような鳴き声で、あのおばあさんの名前を誰かが叫んだ。 次の夜も、その次の夜も毎晩その鳴き声は続いた。 優作はそのことを同じ会社で働く日本人の西郷どんに話した。 西郷どんは、西郷隆盛ににている太った30代の先輩だった。 タイにはもう住んで10年だった。 ”優作、それはトカゲの一種でタイでは田舎によくいる生物だ” ”そうなんですか、知らなかったです。” ”ほら、これ見てみろ。” 西郷どんは、Webでトッケーの写真を見せた。 ”え、こんなのが鳴いてるんですね。” その写真は、ちょっと不気味な大きな目をしたトカゲだった。 ”夜中に外に出て、あたりをみてみたらいい。” ”いや、でも夜はちょっと人気がない場所なので。” ”それなら、今晩、俺もお前の家に泊まってみようか。” ”それなら、安心です。正体を見てみましょう。” 深夜0時。いつもどおり、不気味な鳴き声が聞こえ始めた。 ”トッケー、トッケー、トッケー、トッケー” 二人は急いで外に出てみた。 するとどうだろう、入り口には、隣の大家のおばあさんが立っていた。 目は写真で見た、トッケーのように大きくオレンジ色に光り輝き、 手には、大きな刃物をもって、そして、大きな声で ”トッケー、トッケー、トッケー、トッケー”と叫んで 二人を追いかけ始めた。 そして、夜空に大きなUFOがあらわれ、二人は眩しい光線を浴びて 姿を消してしまった。あとには、トッケーが一匹 ”トッケー、トッケー、トッケー、トッケー”と 何事もなかったかのように鳴いていた。

にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村